大判例

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東京高等裁判所 昭和58年(ネ)1374号 判決

一 当裁判所も控訴人の本訴請求は理由がなくこれを棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり、訂正、削除、付加するほかは、原判決の理由欄記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。

1 原判決八枚目裏三行目、四行目の「厚さ約二ミリメートルの」を削る。

2 原判決九枚目表三行目ないし五行目の「と、被告意匠では周縁部にパイピングが施されているのに対し、本件登録意匠には右パイピングは施されていない点」を削る。

3 原判決九枚目裏二行目の「いえず、」を「いえない。」に訂正し、同二行目、三行目の「その周囲にループによる縁飾りを施けること自体も特徴ある部分とはいい難い。」を削る。

4 原判決九枚目裏四行目の始めから六行目の「質感の違いは顕著であり、」までを削り、これに代えて左のとおり加える。

「これに反し、本件登録意匠における表面周縁部のループによる縁飾り模様は、連続する二列のループが左右対称に形成され、それがマツトの縁にはみ出すことなく沿つているのに対し、被控訴人意匠における周縁部のループによる縁飾りは、模様の基部の片側に外に向つて高さの異なる二種類の連続するループが形成され、高いループは頂部がマツトの外にはみ出し、茎部が低い方のループ内に挿入され、各ループとも基部において別珍の布地に複雑に縫いつけられているので、低い方のループ部分は布地部分に密着している関係と高い方のループ部分の基部が密着挿入されていることもあつて、高い方のループ部分とは異なつた感じを与えるのみならず、各ループ基部の縫付部分も多くの糸を用いて縫い付けてあるため一種の模様を形成しており、本件登録意匠と被控訴人意匠とはこれらの点においても看者に与える美感において顕著な差異があるものというべきであり、」

5 原判決九枚目裏一〇行目の次に左のとおり加える。

「控訴人は、被控訴人製品の電話機マツトの厚さは約三・五ミリメートルであるのに対し、本件登録意匠の願書に添付した図面代用写真によつて測定した電話機マツトの厚さは約四ミリメートルないし五ミリメートルであるから、両者の間に顕著な差はない旨主張するが、仮に各測定値が控訴人主張のとおりであるとしても、両意匠の間に前認定のような差異があることは明らかである(その差は特に平面図、底面図において感知される。)から、控訴人の主張は採用できない。

6 原判決九枚目裏末行の「素材」を削り、これに代えて「周縁部のループによる縁飾り模様」を加える。

二 よつて、控訴人の本訴請求は、その余の点を判断するまでもなく理由がなく、これを棄却した原判決は相当であるから、本件控訴は理由がないものとして棄却する。

〔編註〕 本件における当事者の主張は左のとおりである。

当事者双方の主張は、次のとおり、付加するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、ここにこれを引用する。

一 控訴人の補充した主張

1 意匠の同一性を判断する場合には、素材の違いに基づく質感の違いは除外すべきである。もともと、材質そのものは意匠の同一性を判断する材料とはならない。

もつとも、質感の相違が形状、模様、色彩に影響する場合は、この限りではない。しかし、それはそういう場合もあるというだけのことであつて、質感の相違と形状ないし模様の相違とは全然別個の事柄である。質感に相違があれば、当然に形状ないし模様に相違があることになるというものではない。

2 被控訴人製品の電話機マツトの厚さは、少くとも約三・五ミリメートルである。けだし、ウレタンフオームの厚さだけでも少くとも二ミリメートルあり、それに厚さ約一・五ミリメートルの別珍の布地が貼り合わされているからである。

これに対し、本件登録意匠の電話機マツトの厚さを願書に添付した図面代用写真によつて測定してみると、約四ミリメートルないし五ミリメートルである。これを前記被控訴人製品の電話機マツトの厚さ約三・五ミリメートルに比べてみれば、僅かな差でしかない。両者の間に顕著な差などあるはずもない。被控訴人製品の電話機マツトがうすべり状であるならば、本件登録意匠の電話機マツトもうすべり状である。

3 四隅にアールをとつた長方形状は、三角形、四角形、円形、楕円形等と異なり、一般に広く知られ色々な物品に広く化体しその形状をいえば誰でもそれを思い浮べることができる、いわゆる周知形状ではない。本件登録意匠の四隅にアールをとつた長方形の形状は、それが電話機の形状に対応したものであり、意匠上の苦労はあまりないかもしれないが、いわゆる周知形状ではないから、極めてありふれたものということはできない。四隅にアールをとつた長方形状は、比較的簡単であるけれども、本件登録意匠の特徴であることを妨げない。

4 本件登録意匠の周縁部のループによる縁飾り模様は、水玉模様、市松模様等と異り、いわゆる周知模様ではないから、極めてありふれたものということはできない。この周縁部のループによる縁飾り模様は、本件登録意匠の特徴であることを妨げない。

二 被控訴人の補充した主張

1 質感は、意匠の構成要素ではないから、意匠の同一性の判断要素とはならないとしても、質感の相違が視覚で認識され、それが形状、模様、色彩に影響する場合は判断要素となる。視覚で認識される質感は、形状又は模様の一態様として把握される余地がある。

特許庁における意匠登録出願に関する取扱の実務においても、形状、模様として表われうる手ざわり、光沢等のいわゆる質感が、意匠の構成要素となることが認められている。

本件についてこれをみるに、本件登録意匠の願書に添付した図面代用写真によつてそのレザーシート様の可撓性材料の表面に認められる形状ないし模様と、被控訴人製品の別珍及びウレタンフオームの表面に認められる形状ないし模様との間には顕著な差異があるというべきである。

2 控訴人は、被控訴人製品のマツトの厚さを約三・五ミリメートルとし、本件登録意匠のマツトの厚さを、願書に添付した図面代用写真により測定して、約四ミリメートルないし五ミリメートルとし、この両者の厚さを比較して、僅かな差でしかない、と主張するが、右の約三・五ミリメートルというのは、被控訴人製品のマツトの実物について測つた数値であり、右の約四ミリメートルないし五ミリメートルというのは、本件登録意匠の図面代用写真におけるマツトの厚さを測つたものというのであるから、両者はそもそも直接には比較の対象にならないものである。なぜならば、マツトの幅(マツトを正面から見た場合における短辺に該る。)についてみても、前者が約二一七ミリメートルであるのに対し、後者では約五三ミリメートルに縮尺表示されているからである。

3 本件登録意匠の正面図の形状は、四隅にアールをとつた長方形状であつて、極くありふれたものであり、電話機の底面の形状とも一致し、特徴的なものとはいえないものである。

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